アルジの植物道楽

親友と暮らすイヌビワさん

 

農園の多目的広場の林の入口に、大きなエノキに寄り添うように生えているイヌビワが、赤い実をたくさんつけていました。この子、最初は枝ぶりがとても美しいなと思って、切らずに残した木なんです。

 

そのうち実をつけるようになって、ここを訪れるお客様にも「この赤い実は何ですか?」と聞かれるようになり、「食べられますか?」ともよく聞かれます。花摘み会でブーケに入れる人もいました。

 

この木は雌雄異株といって、オスとメスに分かれて暮らしています。で、この子は男の子。実を食べても、美味しくはないです。このオスの木にも実はなるけど、種が出来ることはありません。でもメスの木は、ちゃんと実って種が出来ます。それには理由があるんです。

 

この木にはイヌビワコバチという親友がいます。この親友だけが受粉をしてくれるんです。他のハチではダメなんです。

 

オスの木は、メスの木の受粉をこの親友にやってもらう代わりに、彼らの卵を自らの実の中に生んでもらって、孵化したらその子に食べてもらって、つまり養父として親友の子供を養ってあげるんですね。一方、メスの木の実には卵を生めないような構造があって、受粉だけをしてもらって、そのまま普通に実が育ちます。

 

この子たちは、どちらも強い絆で結ばれていて、どちらが欠けても子孫を残せないから、生きていけませんし、代わりは誰もいないんです。絶対的相利共生という関係です。

 

僕はこの話を初めて知った時、とても驚きました。そして植物だけでなく、昆虫や他の生物たちに愛おしさも感じます。人間だって他の生物がいなければ、生きていけません。それなのに人間様は随分身勝手に振る舞って、環境を壊し続けている。

 

今日の気温は35度。来週は38度の予報。大雨で被害が出た地域もある。自然豊かなはずのこの国でも、既に人間が住むのに相応しくない環境になりつつある。

 

本当に恐ろしいことですよね。とにかく、やれることから、少しずつでもやっていこうと思います。

 

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